外国人採用が進む日本。今では日本で働く外国人の力が日本経済に欠かせないものとなっています。
人材の採用、育成には時間もお金もかかります。せっかく優秀な人材を採用できでも、すぐに離職されてしまったらとても残念ですよね。
ただ離職に関して、外国人と日本人の感覚はやや異なった面があるのも事実です。
今回は、ベトナム人の離職理由について考えてみたいと思います。
ベトナム人の離職率
ベトナム人の離職率は20%を超えるとも言われています。
ベトナム人は転職=ステップアップ、キャリアアップと考えています。そのため、転職に対する抵抗感は低く、むしろ転職に対して積極的でもあります。今よりも少しでも条件の良い職場からのオファーがあれば、躊躇なく転職を選びます。
日本のように、同じ会社で長く働くことが良いという風潮はなく、仕事内容や環境、待遇が合わないと思ったら、我慢をせずに他を探す、という人が多いのも特徴です。より良い環境や給与を求めて転職することは当たり前であり、計画的に将来のために働く、というよりも「今」を大切にするという、近視眼的であると言われるベトナム人の特徴でもあります。
ただし、マネージャーなど上のクラスになるにつれ、生活の安定を優先する傾向もあります。
ベトナム人の離職はある程度仕方のないものです。雇用側としても長く勤めてもらえる努力をするとともに、社員の転職は避けられないもの、という考えを持つ必要もあります。
ベトナム人の離職理由
ベトナム人の離職理由は様々ですが、代表的な離職理由をいくつか見ていきましょう。
①給与・賞与への不満
やはり一番は給与への不満です。「給与等収入が少ない」という理由は退職理由の中でも目立ちます。
実際に、外国人労働者の平均賃金は、日本人の平均賃金の約7割の水準となっています。
日本人との給与、仕事内容、評価での待遇差が外国人労働者の不満の大きな要因となっています。どれだけ頑張ったとしても自分の評価が低く、日本人との待遇差が大きければ、それが退職理由となります。
自分の頑張りをしっかりと給与に反映してもらえていないと感じると、転職を考えるようです。
②人間関係
日本でも職場の人間関係は退職理由の大きな要因となりますが、ベトナム人も同じです。
上司が公平な判断をしてくれない、上司が尊敬できない、判断が遅い、など、マネジメント側への不満はもちろん、職場で孤立してしまう、仲良くできない、差別をされる、パワハラ、セクハラなど、人間関係の問題が退職理由となります。
ベトナム人はプライドが高く、人前で叱責されたりするのをとても嫌がります。それがきっかけで退職…ということにもなりかねません。その一方で、人前で褒められることをとても喜びます。ベトナム人の社員が良い仕事をした際には、積極的に人前で褒めるようにするとモチベーションアップにつながります。
ベトナム人の国民性を理解し、お互いきを尊重するような人間関係を築く努力が必要です。
③仕事とプライベートのバランスが取れない
ベトナム人は、日本人のように残業や休日出勤が当たり前だとは思いません。仕事は勤務時間内、勤務時間が終わったらさっさと仕事を終えて友人や家族と過ごすのが当たり前です。拘束時間が長いのはベトナム人に嫌がられます。
残業や休日出勤をさせるのであれば、しっかりとそれに対価を支払うのが当たり前。日本人のようなサービス残業は以ての外です。
仕事をプライベートのバランスをとれるような環境を用意することが大切です。
④スキルアップが望めない
ベトナム人は向上心が高いことでも知られています。ルーティンワークのみの仕事では自分のスキルアップが望めない、と、新しい環境を希望することも多々あります。
仕事がマンネリ化してモチベーションが下がるような環境では、ベトナム人の離職は防ぐことができません。同じ仕事だけではなく、新しいチャレンジを与えてあげることでモチベーションの低下を防ぐことができます。育成環境を整えることが大切です。
⑤自分の能力が活かせない
ベトナム人は日本に大きな希望を抱いて来日します。ベトナムで磨いたスキルを活かせ、さらにレベルアップできる環境を期待しています。
ベトナム人はプライドが高いこともあり、実際に自身の能力について客観的な市場価値を理解している人は少ないです。自分の能力が活かせないと感じ、離職するベトナム人も多いのです。
スキルや能力が身に付く仕事やポジションを任せる、責任ある仕事を任せることが、人材流出の防止に効果的です。
⑥家庭の事情
家族を大切にするベトナム人は、家庭の事情で離職することがあります。社会人として家族を助ける事を最重要に考える傾向があります。
ベトナムではまだ医療が脆弱な地域もあり、家族の入院や介護により退職を希望する場合もあります。
また、家業を手伝うなども離職理由となります。
⑦独立
ベトナム人は自分で事業を興すことを目標とする人が多いのも特徴です。規模の大小に関わらず、一国一城の主となる事を望む傾向があります。
ベトナムでは少ない資本でも起業が可能なので、独立をするために退職する人もいるでしょう。
ベトナム人の離職を防ぐには
離職率が高いと言われているベトナム人の離職を完全に防ぐことできません。
しかし、上記のような理由での離職が多い事を知っていれば、離職率を下げることも可能でしょう。
上記の理由を踏まえて、以下のようなことに気をつけてあげてください。
①残業や休日出勤を強要しない
ベトナム人は、仕事に自身のライフスタイルを制限されたくない、豊かに過ごしたい、という素直な欲求を持っています。仕事のために自分のプライベートを犠牲にしてまで働く、という意識は日本人よりも低いでしょう。
仕事とプライベートをしっかりと区別して充実した生活を送りたいと願うのは日本人も同じですが、ベトナム人の方がはっきりとしています。
②新しいスキル取得や能力向上が見込める仕事を任せる
ベトナム人は向上心があり、スキルアップにも積極的です。成長が見込める環境に身を置き、給与アップのために自身のキャリアを磨きたいと思っています。
責任ある仕事を任せることで、仕事に対するモチベーションも上がり、離職を防ぐこともできます。
③福利厚生を充実させる
給与面はもちろんですが、その他の福利厚生の充実もベトナム人にとって魅力的なポイントになります。民間保険への加入などもよく取り入れられており、本人だけでなく、家族への保障もあると大変喜ばれます。
仲間を大切にするベトナム人ですので、会社内のイベントが多いことも喜ばれるポイントです。みんなでワイワイと仲良くなれる飲み会、忘年会、社員旅行などは積極的に行い、できれば家族まで招待してあげるとなお喜ばれます。
④ベトナム人のリーダーを採用する
ベトナム人にはベトナム人のマネージャーやリーダーを配置するのも良いでしょう。
ベトナム人同士でマネジメントやコミュニケーションを図るだけでなく、経営側と従業員の間を取り持ってくれるなど、人材の流出を防ぐと同時に、ベトナム人従業員の良いロールモデルにもなってくれます。
⑤良い面はみんなの前で褒める、注意は一人一人個別に
プライドの高いベトナム人。人前で怒られたり注意される事はプライドを傷つけられたと感じ、離職につながります。注意をする場合は一人一人、個別に行いましょう。
一方で、人前で褒められることは大変誇りに感じますので、積極的に人前で褒めることで仕事へのモチベーションアップにつながります。
⑥会社の目標、部署の目標を共有し、やるべき事を明確にする
ベトナム人は自分に与えられたミッションに対しては誠実に向き合い、コツコツと実行する人が多いので、しっかりと目標やゴールを設定し、そのための協力体制を築くのが大切です。
会社の目標や部署の目標を共有し、やるべき事を明確にしてあげる事で仕事への意欲が高まり、積極的に仕事に取り組んでくれるようになるでしょう。
⑦仲間意識を高める
ベトナムは儒教が根付いているので、年上や目上の人に対して敬意を持って接します。仲間意識も高く、仲間のために一生懸命になってくれる優しさもあります。
会社が自分を大切にしてくれていると感じるならば、それに応えようとしてくれます。
同じ目標に向かって努力をしている仲間であるという意識を持ってもらうため、是非、積極的にベトナムのことを知って、文化理解を深めてください。自分の国や故郷、家族について興味を持ってもらえるのは嬉しいことです。人間関係は、コミュニケーションが基本です。
相手に興味を持ち、会話をする事で、仲間意識を高めていきましょう。
ベトナム人採用についてはこちらもご覧ください。
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