下町の「亀戸天神社」で日本らしい春を楽しむ。

京都府伏見稲荷大社や広島県厳島神社、東京都明治神宮など、日本観光に欠かせないのが神社だ。すでにガイドブックでたくさん紹介されているが、素敵なのに知名度が低い隠れ家的神社は、まだまだ存在する。

例えば、東京都江東区の亀戸天神。約350年以上の歴史を持ち、規模も十分ながら、あまり観光資源のないエリアゆえ、目立たない存在に。日本人でも知っているほうが珍しいくらいかも。

そもそも、亀戸という土地は東京の東端に近く、とてもマイナーである。常に流行から2〜3歩遅れているような街。実際、ほんの10年くらい前まで、元遊女の粋なご婦人方が闊歩していたくらい。おかげで前時代の風情、趣がたっぷり残っており、下町の空気というのを存分に味わえるわけ。しかも、春の亀戸天神は藤まつりが見もの。知る人ぞ知るイベントながら、一斉に垂れ下がる藤は圧巻で、近隣住民にとって大切な風物詩。これからちょうど良いシーズンを迎える。少し足を伸ばして、美しい薄紫の花を愛でてみてはいかが?

 

 

蔵前橋通りを曲がると見える大きな鳥居が目印

JR総武線亀戸駅から亀戸天神までは徒歩約15分。駅前の明治通りを直進、亀戸四丁目交差点を左折し、蔵前橋通りに入って、しばらくすると右手に。正門より手前にも入口の案内があるが、東門に向かってしまう、いわばショートカットなので初訪問ではおすすめしない。大鳥居が迎えてくれる正門から境内に入れば、メインとなる参道をしっかり通れる。

 

 

学問の神様を祀る立派な本堂

境内には大きな池と3つの橋が。最初に渡るのが太鼓橋(男橋)。続いて平橋、太鼓橋(女橋)。それぞれの橋は過去、現在、未来を意味し、渡るごとに心が清められるとか。男橋と女橋はかなり角度があるのでご注意を。

奥にそびえる本堂で祀られるのは菅原道真公。平安時代前期の学者にして詩人、政治家であり、死後に天変地異が多発したことから、神様として信仰されるようになった。とくに学問を司っており、受験シーズンは多くの人が手を合わせる。有名な九州太宰府天満宮も道真公に由来。西の太宰府に対し、亀戸天神は東宰府天満宮と呼ばれていたことも。

本堂周辺には鷽の碑、神牛、各種灯篭など、チェックすべき名物が盛りだくさん。

 

 

境内中に広がっている藤棚。

スカイツリーを間近に感じられる敷地内に、びっしりと藤棚が並ぶ。秋冬のオフシーズンはとても地味だが、春になると一斉に藤が花を咲かせ、東京一の藤の名所と呼ばれるほどの景観となる。

 

 

毎年四月下旬から五月初旬に藤まつり。

四月後半になると藤が一斉に開花し、藤まつりがスタート。50株以上が咲き乱れるようすは全国でも珍しく、池に映る姿とかすかな香りが多くの人を惹きつける。下町情緒溢れる屋台が多く出店するのも、現代では希少な風景だ。

夜中にはライトアップが施され、昼間とは違う幻想的表情まで楽しめる。

 

 

元祖くず餅で知られる船橋屋が近所に

小麦澱粉を発酵精製し、丁寧に蒸し上げる”くず餅”は、1805年に亀戸天神そばの船橋屋から誕生。明治初期には江戸甘いもの屋番付に、横綱として掲載されるほど有名で、今もひっきりなしにお客さんが訪れる。くず餅のほか、あんみつやところてんなども扱っており、お土産とイートインが可能。天神様帰りには忘れず立ち寄りを。

 

 

帰りには100年以上続く豆の老舗をチェック。

亀戸駅へと向かう商店街、十三間通りの入り口には、老舗の煎り豆屋である但元いり豆本店が。創業1916年の老舗だけに年季たっぷり。塩豆や花豆、かた豆といった豆菓子全般を取り扱い、遠方から親子三代に渡って通っている人も。一番人気の塩豆はビールや日本酒のおつまみに最適なんだとか。

 

 

駅前の庶民派グルメも見逃せない。

亀戸駅周辺の裏道には亀戸餃子や亀戸ホルモンなど、行列のできる飲食店が多数。どこもリーズナブルかつ美味しいので、時間が許すなら並ぶ価値あり。とくに亀戸餃子のひたすら餃子だけを食べるシステムは、ほかでは体験できない。江戸っ子感溢れる雰囲気とともに思い出になること間違いないだろう。

 

亀戸天神のエリアは、観光地として超メジャーな浅草に雰囲気こそ似ているものの、洗練されていない分、リアルな下町感が漂う。大通りから少し横道に入れば、より静かなローカルの趣を感じられ、古き良き日本の風情が学べるはず。

 

 

Edit & Text:K.Sachio

<PROFILE>

エディター・ライター。ファッション雑誌を中心に、カルチャー系や飲食モノなど、多ジャンルで活動している。動物と家族を愛するハードな甘党。

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